すこしずつ暖かくなってきましたね。
寒さで引きこもりがちだった方も動き出す頃ではないでしょうか。
学生では、春からの大会に向けて練習量や練習時間が増えているようで、それにともない体のトラブルを抱えてしまいます。
当院には、スポーツによる痛み・ケガで来院される学生さんが多数おられます。
負傷の原因としては
・競技中に転倒した(捻挫など)
・試合、練習でのオーバーユース(使いすぎ)
・試合や練習の前後のケア不足(ウォーミングアップやクールダウン)
などがあげられます。
そのなかで、スポーツによるケガは、外傷と障害とに分けられます。
外傷とは、骨折や脱臼、捻挫や打撲など転んだり、ぶつかったりして傷めたケガなどです。
一方、障害とはスポーツによる使いすぎ(オーバーユース)を原因として発生するものです。
たとえば、野球の投球動作などで、肩や肘など特定の箇所に繰り返しの負荷が加わることにより
その周囲の組織などに炎症が生じたり、組織自体の変性や破綻を来すものです。
外傷は筋力をつけたり、柔軟性を高めたりすることによってある程度の予防は可能ですが
接触プレイや不意の転倒など、なかなか予防しにくい部分もあります。
しかしスポーツ障害は、本人と周りの大人(指導者や親御さん)の正しい認識があれば
高い確率で予防ができると感じています。
こんな言葉に心当たりはないでしょうか?
指:「弱音を吐くな」「次の試合に勝てないぞ」
親:「ほんとに痛いの?」「〇〇くんはあんなに頑張ってるのに」
もちろん、頑張ってほしいと思う気持ちはすごくわかりますし
練習やトレーニングは大事ですが、こどもの成長には個人差があります。
なので、個人に見合った練習方法や練習量が大切で
背丈や体格、体力や筋力などを考慮する必要があります。
漠然とした反復練習や《根性論》を思わせるような練習では身体に負荷がかかりすぎ
試合当日に疲労や痛み、過度の筋緊張を残してしまい、かえって力を発揮できないこともあります。
では、なぜこんなにも注意してあげなければいけないのか。
それは、大人と違って、成長期のこどものスポーツ障害は関節部に変形を残したり
後々まで痛みを引きずってしまい、競技生活を早くに終えてしまうことにつながります。
そして、競技生活を終えてからでも痛みに悩まされている可能性もあります。
・変形とは
こどもの骨の端は、大人と違ってまだ軟骨で、 その中に骨化核と言う骨を作る元があります。
これを骨端軟骨といい、成長と共にこの軟骨が骨化していきます。
そしてこの軟骨が骨化する(体が成長する)際に、過度にストレスがかかり過ぎると
骨端が変形したり、骨端部分が剥がれてきたりします。
骨が変形してしまうと自然には元に戻らず、手術にまで至るケースも少なくありません。
大人になると骨化して固くなっているから変形はしにくいですが
こどもはまだ軟骨状態のところが体の至る所にあります。
なので、成長期のスポーツ障害には特に注意が必要なのです。
スポーツ障害になりやすい特徴として、チームの中心人物だったり、 期待をされていたりで
少々痛くても痛いとは言えない、言わないこどもがほとんどです。
練習中、少し注意をして動作を見てあげたり、こどもの声に耳を傾けてあげるだけでも
処置が早くでき、スポーツ障害を防げる場合もあります。
この2つは専門的な知識がなくてもできることなので意識してみてください。
結果的には、体をしっかりとサポートしてあげることが、 ケガの予防にもつながるだけでなく
パフォーマンスのアップにもつながり、指導者、親御さんの安心にもつながることになっています。
予防のポイント
ポイント1
ウォーミングアップ
スポーツによる障害や外傷を未然に防ぐためには、準備運動が欠かせません。
体温を上げ、筋肉・関節を柔軟にするなどの効果があります。
目安ですが、15~20分ほどストレッチやジョギングなどをして身体を温めましょう。
柔軟性を出すには関節の可動域の8割ほどを動かす動きがオススメです。
ゆっくり筋肉を伸ばすように行うことがコツです。
ポイント2
クールダウン
ウォーミングアップと反対の効果を持つクールダウン(整理運動)は
運動によって興奮した筋肉を鎮めて、疲労回復を促す効果があります。
軽いジョギングやウォーキングなどから徐々に動きを止め、ストレッチや必要であればアイシングを行いましょう。
忘れがちですが、次回の運動への下準備としっかり意識しましょう。
ポイント3
適度な練習量
ひとつの練習メニューを長く行うことで関節、筋肉、腱などに継続的に負担が加わります。
ただ量を増やすのではなく、フォームの確認や練習の合間にインターバルをおいて区切りをつけます。
休憩を入れることで体への負担も軽減され、短期集中で効率もアップします。
ポイント4
体格に応じたトレーニング法
小中高生の時期は成長スピードや体格の個人差が大きいです。
指導者は、団体ではなく個人の発育に合わせた指導を心がけましょう。
可能であれば、全体練習と個人練習のメニューを考えてあげるのもいいですね。
身体ができていないうちは、スピードやパワーではなく、正しいフォームや上手な身体の使い方を優先して指導しましょう。
練習方法や考え方などは様々ですが、「体への負担」を考慮してあげてください。
当院ではケガの治療はもちろん、各スポーツでの正しい身体の使い方やトレーニング方法なども指導しております。